熊本地方裁判所 昭和32年(レ)83号 判決 1960年9月15日
控訴人 山下泰蔵 外三名
被控訴人 協同組合矢部町名店会
主文
一、原判決を取消す。
二、被控訴人は控訴人山下泰蔵に対し別表(一)記載の各抽せん巻一枚と引換えにマツチ(昭和三十一年八月二十三日当時価格二円の家庭用小型マツチ、以下同様)一個(合計三百三十八個)を
控訴人芥川高一に対し別表(二)記載の各抽せん券一枚と引換えにマツチ一個(合計二十七個)を
控訴人後藤鶴正に対し別表(三)記載の各抽せん券一枚と引換えにマツチ一個(合計二十四個)を
控訴人緒方宏安に対し別表(四)記載の各抽せん巻一枚と引換えにマツチ一個(合計四十個)を
それぞれ引渡せ。
三、前項の物品に対する強制執行不能のときは被控訴人は各控訴人に対しマツチ一個につき金二円の割合による金員を支払え。
四、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
五、此の判決は控訴人山下泰蔵において金二百円、控訴人芥川高一、同後藤鶴正において金二十円、控訴人緒方宏安において金四十円の担保を供するときは各自仮に執行することができる。
事実
控訴人等代理人は主文第一乃至第四項各関係部分同旨の判決並びに仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人等の負担とする。」との判決を求めた。
当事者双方の事実上及び法律上の主張は、控訴人等代理人において請求の原因として
一、被控訴人協同組合矢部町名店会(以下被控訴人組合と略称する。)は、昭和三十一年七月十一日から同年八月二十日迄買上額二百円毎に抽せん券一枚を顧客に交付し、抽せんの結果等外の券に対しては顧客の希望に従い、石鹸一個または封筒一束またはマツチ一個を進呈するという条件の下に中元大売出しを催し、その旨を記載したポスターを貼付して広告し、また同一内容の小型ビラを配付して周知せしめた。
二、控訴人等は顧客として別表(一)乃至(四)記載の通り控訴人山下泰蔵は三百三十八枚、同芥川高一は二十七枚、同後藤鶴正は二十四枚、同緒方宏安は四十枚の抽せん券の所持者であるが、昭和三十一年八月二十三日抽せんの結果、右抽せん券は何れも等外と決定したので景品引渡有効期間である同年八月二十五日午後五時迄の間に被控訴人組合の景品引渡所において右抽せん券を呈示して景品の引換を求めた、右抽せん券は無記名の債券であるから抽せん券の発行者は抽せん券が偽造でない限り、抽せん券所侍者の何人たるか、また抽せん券の入手経路の如何について問う権利はない。抽せん券所持人は何人たるを問わず景品引渡請求権を有するものである。而して、被控訴人組合が昭和三十一年七月十一日から同年八月二十日迄の期間を限つてなした景品付中元大売出しの広告は懸賞広告の一種であつて、控訴人等は中元大売出し広告に定められた通り被控訴人組合が発行した抽せん券一枚を取得したことにより、一個の景品引渡請求権を取得し、被控訴人組合は景品引渡義務が発生する。即ち右景品は抽せんにより一等乃至五等に当選した抽せん券所持者が特定すると同時に当選しなかつた抽せん券所持者も特定し、この等外景品は石鹸、状袋及びマツチの三種で「空くじなし」であるから抽せん券一枚について一個の景品引渡の請求権がある。この請求権に基き控訴人等は景品の種類の選択権を有するものである。仮に被控訴人において右景品の種類の選択権があるとするも、被控訴人において右選択権を抛棄したので選択権は控訴人に移つたものである。よつて控訴人等はマツチを選択し被控訴人組合に対し主文第二項の通り景品の引渡を求め、もし右景品の引渡ができないときは各控訴人に対して、マツチ一個につき金二円の割合による金員の支払を求めるため本訴請求に及んだものである。
三、被控訴人の主張に対し、景品付中元大売出しの広告の変更が昭和三十一年八月二十三日になされた事実はたい。右広告の変更は同年八月二十五日控訴人等が抽せん券を呈示した後になされている、従つて広告が変更されたとしても効力がない。仮に広告が変更された旨の広告が同年八月二十三日になされたとしても、それは控訴人等に不利な内容の変更であるから無効であると述べた。被控訴代理人は答弁として
一、請求原因第一項中被控訴人組合が控訴人主張の期間中景品付中元大売出しを催し、控訴人主張の条件で抽せん券を顧客に交付し、右抽せん券を所持する商品買上者に控訴人主張のポスター掲記の各景品を贈呈する旨の広告をなしたこと及び等外の景品として石鹸一個、状袋一束、マツチ一個と定めたことは認める。同第二項中控訴人等が主張の枚数の抽せん券を景品引換のため抽せん券呈示期間内に景品引換所において呈示したこと、景品の種類の選択権を抛棄したことは認める。控訴人がマツチを選択することに異議はない。その余の控訴人の主張は否認する。
二、本件広告は商品買上に対し抽せん方法によつて定まる景品を贈与する契約の申込、または商品買上を条件とする贈与の単独行為であつて、自ら買上げをしないで単に抽せん券のみを他より譲り受けた者の如きに景品を贈呈する趣旨の広告ではない。控訴人等が商品の買上げをなした事実は之を争う。控訴人等が抽せん券のみを他の買上者から取得したものであるならば本訴請求は理由がないものであり、なお、仮に商品買上者であつたとしても本件の贈与は書面を以てしないものであるから、履行前たる本訴において贈与の取消を為すものである。
三、等外景品が石鹸、状袋、マツチと広告されたが、その種類、品等、価額は被控訴人において決定すべき事項で、被控訴人組合は大体抽せん券一枚につき金五十銭相当の石鹸、状袋、マツチ等を贈呈する計画であつたが、買主の便宜と被控訴人組合の事務上の便宜とを図り等外当選者には抽せん券二十枚につき価格十円程度の石鹸一個、抽せん券十枚につき価格五円程度の状袋一束、抽せん券三枚につき価格二円程度の家庭用マツチ一個を贈呈することとし、その旨抽せん当日の昭和三十一年八月二十三日抽せん場に大型西洋紙に記載し、ラヂオ、スピーカー等の方法を以て同趣旨を放送し、景品引換に際しても同様の措置をとつて一般に周知せしめた。被控訴人組合のかかる措置は当日参集の顧客の大部分に承認せられたものであり、右引換方法はこの種景品付売出における当地方の商慣習でもある。然るに、控訴人等は広告に等外(空くじなし)石鹸一個、状袋一束、マツチ一個とある点を捉えて、十円の石鹸一個、五円の状袋一束、二円のマツチ一個を抽せん券一枚につき各一個の引渡しを求めるので被控訴人組合はこれを拒否したものである。
四、控訴人等の本訴請求は控訴人等が被控訴人組合の広告表示の欠陥を故意に衝き訴訟を提起したものであつて信義誠実の原則に反し、また権利の濫用であると述べた。
証拠として、控訴人等代理人は甲第二乃至第六号証(甲第四号証は一、二)を提出し、原審証人長崎金雄の証言及び当審における控訴人山下泰蔵本人の尋問の結果、原審証拠保全による検証の結果を援用し、乙号各証の各成立は認めると述べた。
被控訴代理人は乙第一及び第二号証を提出し、原審における被控訴人組合代表者坂梨利兵衛の尋問の結果を援用し、甲第四号証の一、二、同第五号証及び同第六号証の各成立を認め、同第二及び第三号証の各成立は不知と述べた。
理由
一、被控訴人協同組合矢部町名店会(以下被控訴人組合と略称する)が、控訴人主張の期間中主張の条件の下に景品付中元大売出しを催し、抽せん券を顧客に交付し、主張の如く抽せんの結果、等外の券に対しては石鹸一個または状袋一束またはマツチ一個を進呈する旨のポスターを貼付し、ビラを配付して広告したこと並びに控訴人等が主張の枚数の抽せん券を景品引換のため抽せん券呈示期間に呈示したことは当事者間に争がない。
二、控訴人等は本件景品付中元大売出し広告は懸賞広告の一種であるから、控訴人等は右広告に定められた通り被控訴人組合発行の抽せん券一枚を取得したことにより一個の景品引渡請求権を取得し、また控訴人等所持の抽せん券が偽造でない限り抽せん券入手の経路を問う権利はなく、抽せん券所持人が景品引渡請求権を有するものであると主張するのに対し、被控訴人は本件広告は商品買上げに対し、抽せん方法によつて定まる景品を贈与する契約の申込、または商品買上を条件とする贈与の単独行為であるから、自ら買上げをしないで抽せん券を取得したものには景品引換の権利はない。本件広告の性質が右の如く贈与とみなされる場合、本件の贈与は書面を以てしないものであるから履行前たる本訴において贈与の取消をなすものであるとして争うのでまず本件抽せん券の性質につき考えるに、前示当事者間争のない事実によれば、被控訴人組合は、大売出期間の昭和三十一年七月十一日から同年八月二十日までの期間中、顧客に対し買上額二百円毎に抽せん券一枚を交付すること、右抽せん券により抽せんをなし、一等乃至五等までの当せん者及び等外者を定め、右当せん者及び等外者に対し、予め定める景品を引渡すこと、空くじはないことを定めてその旨大売出期間開始前に広告をなしたことが明かである。ところで、このような広告をなした者は、右広告にある期間中被控訴人組合から適法に抽せん券の交付を受け、抽せん日に抽せんを受け、且景品引渡日までに右抽せん券により景品の引渡を求める者に対し、広告に定められた景品の引渡をなすべき義務を負担すべき意思表示をなしたものというべきであつて、被控訴人組合は、右意思表示につき自ら拘束を受けるものといわねばならない。而して、被控訴人組合が顧客に交付した抽せん券の所持人は、右抽せん券による当落が確定すると同時に、当せんと否とに拘らず、抽せん券一枚毎に、夫々前記広告に定められた景品の引渡を請求する権利を有するに至るものと認められ、且右権利を行使するためには、少くとも、右抽せん券の占有を要するものと認められるので、右抽せん券は、被控訴人組合の前示広告による意思表示により、当落の確定後は不完全ではあるが一種の無記名有価証券たる性質を具有するに至るものと解するのが相当である。而して、本件景品付大売出し広告は広告の方法により不特定人に対する意思表示をなした点では懸賞広告に類似するもので、右意思表示が単独行為であるか、契約の申込であるかの点はしばらく措き、これが撤回乃至変更については、懸賞広告に関する民法第五百三十条の如き規定は当然準用さるべきものと考えられる。従つて、前記景品付大売出広告において大売出の実施並びに抽せん券の交付につき期間を定めているものであるから、同条第三項の類推により、前記広告を撤回乃至変更する権利はこれを放棄したものと解するのが相当である。これに反する被控訴人の前記主張は採用し難く、他に被控訴人の右主張を認めるに足る証拠はない。
次に、被控訴人は抽せん券による商品引換は直接商品買上をなした者のみに限る旨主張するが、右抽せん券の性質は前示認定のとおりであつて、一種不完全な無記名有価証券と解されるものであり、成立に争のない乙第一号証には「お買上げ二百円毎に本券(抽せん券)一枚を進呈する」旨の注意書はあるけれども、他に景品の引渡請求権の行使者については何等の制限をもしていないものであるから、右抽せん券による景品引渡請求権者を、現実に商品を買上げて抽せん券の交付を受けた者に限る必要はなく、且抽せん券の無記名有価証券たるの性質上これを無償或は有償で譲渡することも自由であると解すべきである。しからば右の点の被控訴人の主張も理由がない。
三、ところで、本件抽せん券を一種の無記名有価証券と解するとしても、その権利の内容は甚だしく不明確である。本件抽せん券が全て等外のものであることは控訴人等の主張自体によつて明かであるが、被控訴人等の前記広告には、等外者には「石鹸一個、状袋一束またはマツチ一個」を引渡す旨表示するのみで、右等外と確定した抽せん券の内容たる権利の目的価格については何等触れるところがない。この点が、本件当事者間に争を生じた根本であると解すべきであるが、右広告或は抽せん券自体によつて、直接右権利の目的価格を知ることができない場合でも、諸般の事情を綜合して右価格を定め得るものとすれば、右価格を定めて、右抽せん券の有する権利を実現することは当事者の意思に合致するものと考えられるので、案ずるに、成立に争のない甲第四号証の一、二によれば、被控訴人組合においては、当初の広告において、等外(空くじなし)として、石鹸一個、状袋一束、マツチ一個を景品として引渡す旨表示し、他に何等の制限を付さなかつたこと、弁論の全趣旨によれば、被控人組合としては昭和三十一年八月二十五日の景品引渡日に、右組合設備の景品引渡所に、等外の抽せん券に対する最小の引換単位としては抽せん券の枚数の点は別として、少なくとも価格二円程度の大東燐寸製造株式会社製パイプ印家庭用小型マツチ一個を準備、陳列したこと、本件抽せん券が、二百円の商品買上げ毎に抽せん券一枚を交付したものであること、大売出しの奉仕として買上額の一%にあたる二円程度の品物を抽せん券一枚の景品として交付することは敢えて社会通念に反するものとも考えられないこと等を綜合すると、被控訴人組合としても、抽ぜん券一枚につき、少くとも価格二円程度の家族用小型マツチ一個を引渡すことを予定して前示広告をなしたものと認めるのが相当である。しからば本件等外の抽せん券の表象する権利は、一枚につき本件抽せん券の抽せん日たる昭和三十一年八月二十三日当時価格二円の家庭用小型マツチ等の引渡請求権であると認めるのが相当である。被控訴人は等外景品が石鹸、状袋、マツチと広告されたが、その種類、品等、価額等については被控訴人において決定すべき事項で被控訴人組合は大体抽せん券一枚につき金五十銭相当の景品を贈呈する計画で買主、被控訴人組合の便宜上等外当選者は抽せん券二十枚につき価額十円の石鹸一個、抽せん券十枚につき価額五円程度の状袋一束、抽せん券三枚につき価額二円程度の家庭用小型マツチ一個を贈呈することとして、その旨抽せん日の昭和三十一年八月二十三日抽せん場に掲載し、ラヂオ等で周知せしめ、当日参集の顧客の大部分に承認せられたもので、かゝる引換方法はこの種景品付大売出しについての当地方の慣習であるとして争い、控訴人はなお景品付大売出しの広告の変更がなされたのは、昭和三十一年八月二十三日ではなくて八月二十五日であり、控訴人等の抽せん券を呈示したあとである、仮に八月二十三日に変更がなされたとしても控訴人等に不利益な内容の変更であるから無効であると主張するのでこの点につき審理するに、成立に争のない甲第四号証の一、二、控訴人本人山下泰蔵の供述によると被控訴人組合の本件広告は最初は等外(空くじなし)、石鹸一個、状袋一束、マツチ一個とし、大売出し期日は七月十一日から八月二十日迄となつており、成立に争のない乙第一号証では等外マツチ一個(本券三枚につき)、成立に争のない乙第二号証では等外(空くじなし)本券二十枚で石鹸一個、同十枚で状袋一束、同三枚でマツチ一個となつており、右乙第一、二号証の広告は弁論の全趣旨によれば、昭和三十一年八月二十三日から遅くとも同月二十五日までになされたことが認められるところ、最初広告をした内容と後の広告では景品の引換枚数において異り被控訴人組合において右広告の表示を変更したことが認められる。しかしながら、本件大売出しが昭和三十一年七月十一日から同年八月二十日迄の期間に亘つてなされたことは当事者間に争がないところであり、右大売出し期間中になされた甲第四号証の一、二の広告には、乙第一、二号証に表示した如き条件を附していないものであるから、これを大売出し期間が経過したあとである昭和三十一年八月二十三日以降になつて前記景品付大売出しの広告の撤回乃至変更が許されないことは前記説示のとおりである。またかゝる景品の引換方法の変更が許容されるとする慣習の存在を認めるべき証拠は一つもない。而して、被控訴人組合がその主張の如き割合によつて等外景品の引換をなすときには、抽せん券三枚とマツチ一個とを引換えることになるので最小限三枚の抽せん券を必要とする計算になり、二枚の抽せん券を所持しているに過ぎない人は景品引換の権利が生じない結果になることは明らかである。単に抽象的に抽せん券一枚が五十銭の価値を有するに過ぎないもので具体的な物品の引渡請求権がないことになれば、畢竟抽せん券一枚につき空くじを生ずることになり、高価な品物を等外商品とするときには抽せん券百枚につき一箇の景品を引換えるという様な場合も可能であり相当数の空くじを生ずることも大売出し開催者の恣意によつて左右されかねないことになる。従つて、石鹸、状袋、マツチの中のいずれを給付するかについての選択権は第一次的には債務者の位置にたつ被控訴人組合が有するものであるから、被控訴人組合としては、抽せん券一枚につき、少くとも一箇の引渡すべき景品を当然用意すべき義務があるものである。次に被控訴人は各景品についての選択権を抛棄したことは当事者間に争のないところであるから、右選択権は控訴人等に移転したものというべく、本件景品付大売出しの等外景品のうち控訴人等はマツチを選択したものであり、而して控訴人等主張の各抽せん券が景品引換の為その有効期間内に被控訴人組合に呈示されたことは当事者間に争がないところであるから、被控訴人組合としては抽せん券一枚につき抽せん日の昭和三十一年八月二十三日当時価格二円の家庭用小型マツチ一個の引渡義務があるものといわなければならない。被控訴人組合代表者坂梨利兵衛尋問の結果中、以上の二、三の各認定に反する部分は措信しがたく、他に以上の認定を覆えすに足る証拠はない。
四、被控訴人は、控訴人の本件請求は被控訴人組合の広告表示の欠陥を故意に衛いたもので信義誠実の原則に反し、権利の濫用であるというが、抽せん券一枚につき景品一個の引渡しをなすべき義務があることは前段において認定したところであり何ら信義誠実の原則に反し、権利の濫用となるものではない。
五、以上の理由により、被控訴人に対し、本件各抽せん券一枚と引換えに控訴人山下泰蔵がマツチ(昭和三十一年八月二十三日当時価格二円の家庭用小型マツチ)一個(合計三百三十八個)を、控訴人芥川高一がマツチ(前同)一個(合計二十七個)を、控訴人後藤鶴正がマツチ(前同)一個(合計二十四個)を、控訴人緒方宏安がマツチ(前同)一個(合計四十個)を夫々引渡すことを求める本訴請求は理由がある。而して右物品の引渡は不特定物としての代替物の一定数量を給付の目的としているものであるが、本来の給付たる右物品に対する強制執行が不能な場合には、特定物に対すると、不特定物としての代替物に対するとを問はず、物の引渡に換えて金銭の支払を命ずることができるものと解すべきところ、右給付の目的たる家庭用小型マツチ一個の価格は本件口頭弁論終結時においても金二円を下らないことは明かであるから、右マツチに対する強制執行不能のとき、口頭弁論終結時の価格を標準として、これが代償を求める控訴人等の請求も相当であるからこれを認容する。右と結論を異にする原判決は不当であるから民事訴訟法第三百八十六条によりこれを取消し、仮執行の宣言につき同法第百九十六条第一項、訴訟費用の負担につき同法第九十六条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 西辻孝吉 吉井参也 小林優)
別表 (一)控訴人山下泰蔵所持の抽せん券
七の組 四六七一 五の組 四九三九 五の組 四九三五 七の組 六六〇八
六の組 七八九六 〃 四九三八 〃 四九三四 〃 六六五九
〃 七八九三 〃 四九三七 〃 四九三一 〃 六六六〇
八の組 六八八〇 〃 四九三六 〃 四九三二 〃 六六八四
五の組 四九二〇 一〇の組 四八六二 〃 四九三三 〃 四六六九
六の組 七八九二 一の組 六七九五 〃 四九一六 一〇の組 四八六一
〃 七八九五 〃 六五一七 〃 四九一七 〃 六一三二
〃 七八九四 〃 六七九七 〃 四九一八 〃 五二五四
〃 五〇七八 〃 六七九六 〃 四九一九 〃 五二五五
七の組 三三〇七 〃 六七九九 九の組 四〇〇三 九の組 四九五四
〃 三〇一五 〃 六八〇〇 二の組 七七〇八 〃 五二二四
二の組 七七〇七 〃 六七九八 〃 七九八九 〃 五二二一
五の組 〇二一八 五の組 〇二一二 〃 七九九〇 〃 四五八八
〃 〇二一九 〃 〇二一三 〃 七九九一 〃 五八八八
〃 〇二二〇 〃 〇二一四 七の組 三〇一二 〃 五八九六
〃 四九四二 〃 〇二一六 〃 三〇一三 〃 三八九一
〃 四九四三 一の組 六六一二 〃 三〇一四 〃 三八九二
〃 四九四一 五の組 〇二一五 〃 二三七四 一〇の組 五七一二
〃 四九四〇 〃 〇二一七 〃 五九五〇 〃 五七一一
一の組 六六一三 九の組 七七六七 九の組 五一八四 九の組 六一三三
一一の組 六四八六 〃 五八九八 〃 五一八一 〃 五五九七
一〇の組 五二五六 〃 五八九七 〃 五七一四 〃 五五九四
〃 六五六一 〃 五八九〇 〃 五七一三 〃 五五九三
〃 二七七二 〃 三三一〇 〃 五七一五 〃 五四七七
〃 五〇〇七 〃 五二〇三 〃 五七一六 〃 二四六六
〃 五七一九 一〇の組 二四七一 〃 五七一七 〃 二四六七
〃 五七二一 〃 二四四七 〃 五七一八 〃 五八七八
〃 八八一六 〃 六八三一 〃 五七二五 〃 五八七九
〃 八八一九 〃 六八三〇 〃 五七二四 〃 五八八〇
〃 八八一七 〃 四六七〇 〃 五七二三 〃 二四七二
〃 八八一八 〃 四九四一 〃 五七二二 〃 二四七〇
〃 六一三五 〃 〇〇七〇 〃 一八〇四 〃 六一三四
〃 七五五八 〃 三〇三五 〃 三八四五 〃 五七二〇
九の組 四〇〇一 〃 三〇三六 〃 五一七九 〃 四〇〇二
〃 五六六五 〃 三〇三七 〃 五一七〇 〃 七二六二
〃 四五八九 〃 四七二二 〃 七五五九 〃 五一六八
八の組 二二九五 〃 五七一〇 〃 七五六〇 〃 五一七七
九の組 三八九三 〃 五七〇九 〃 七五六一 〃 五二一〇
〃 五八八七 九の組 五一九五 〃 六五六二 〃 五一八二
九の組 五一八三 九の組 五一六六 九の組 五二九六 四〇組 一八〇四
〃 五八七三 〃 六一七八 〃 五八七二 〃 一三一二
〃 五八七四 〃 五一八七 三の組 八〇二一 〃 一三一三
〃 五八七五 〃 五一八〇 四の組 六八八九 〃 六七三一
〃 五二〇八 〃 五二〇五 〃 六八七三 〃 六七三〇
〃 五二〇九 〃 五一九二 〃 六八七四 〃 一八九二
〃 五二〇六 〃 五一八五 九の組 五八七六 〃 一七七六
〃 五一九四 〃 五一八六 〃 五八七七 三の組 五二六九
〃 五一九三 二の組 六一七四 〃 三八三五 〃 五二七〇
〃 五一九一 〃 六一七五 〃 三八六二 四の組 五五五一
〃 五一八九 〃 六一九八 〃 三八六五 〃 六八八七
〃 五一六七 〃 六一七七 〃 三八六一 〃 六八八五
〃 五一九〇 九の組 五八八一 〃 三八六六 〃 六八八三
〃 五一七六 〃 五八八二 〃 三八六七 〃 六八八四
一の組 六四六八 〃 五八八三 〃 三八三五 三の組 五二九四
〃 六四六七 〃 五八八四 〃 三八八三 〃 五二九〇
〃 六四六九 〃 五八八五 四の組 六八三六 〃 五二九二
〃 一八〇三 〃 五八八六 〃 六八七八 〃 五二九一
九の組 五一八八 〃 三八五七 〃 六八三八 〃 五二八七
〃 五二〇七 〃 五二九五 〃 九六四二 〃 五二八四
三の組 五二八三 六の組 六〇八〇 四の組 六八三九 九の組 三八七五
〃 八〇一九 三の組 四一〇八 〃 九〇八五 〃 三八七八
〃 八〇二〇 〃 九六四一 〃 五四六九 八の組 八七七八
四の組 六八五九 〃 六八五四 〃 六八五八 〃 八六二六
〃 六八七〇 〃 六八四九 三の組 五二四五 三の組 四一三〇
〃 〇二三五 〃 六八四二 〃 五二七六 〃 四一三一
〃 四一七六 〃 六八五六 〃 五二三五 〃 五二八一
〃 〇二三七 〃 六八五五 〃 五二三二 〃 五二八二
〃 六八七二 〃 六八八八 〃 五二三一 〃 五二九三
〃 六八五〇 〃 四四九七 〃 五二四九 〃 五二九五
〃 六八五二 〃 六八三一 四の組 〇二三六 〃 五二九六
〃 六八四一 〃 五二二四 五の組 五三七五 〃 五二九七
〃 六八四〇 〃 五二二五 〃 五三七六 八の組 五六二七
〃 六八三七 〃 五二二六 〃 五三〇一 〃 五六二八
〃 六八三五 〃 五二二九 〃 五三〇二 〃 五六二九
〃 六八三四 〃 九三九五 〃 四一七九 〃 五六二六
〃 六八三三 四の組 六八八二 六の組 〇五九一 〃 五六二五
六の組 五二六一 〃 六八八一 〃 三四二〇 〃 五六三〇
〃 五二六〇 〃 六八八〇 九の組 三八八五 三の組 九三九六
〃 三三五六 〃 六八七九 〃 三八八六 〃 五二八六
三の組 五二八八 九の組 五二六六 九の組 三八八二 九の組 三七四一
〃 五二八九 〃 五二七一 〃 八六二三 〃 三七四〇
九の組 五二〇二 〃 一三六六 〃 八六二五 〃 一四一四
〃 五一七一 〃 一三九八 〃 八六二一 三の組 五二三四
〃 五二〇四 〃 一三六七 〃 八六二二 合計
〃 五一六九 〃 三八三八 〃 八六二四 三三八枚
別表 (二) 控訴人芥川高一所持の抽せん券
九の組 〇九八三 九〇組 三二一四 九の組 〇九六八 四の組 六八五一
〃 〇九八四 〃 三二一五 八の組 一八〇八 〃 六八三二
〃 〇九八五 〃 三二一六 〃 八四八七 五の組 四七一五
〃 二五八五 〃 三六六二 〃 八四九二
〃 二五八六 〃 六二〇二 六の組 四一七四 合計
〃 二五八七 〃 七八二五 〃 四一七五 二七枚
〃 二五八八 〃 七九〇六 四の組 六八七五
〃 三二一三 〃 七九〇七 〃 六八七一
別表 (三) 控訴人後藤鶴正所持の抽せん券
一〇の組 六〇三六 二の組 三四五五 二の組 三七八八 二の組 七二七〇
二の組 三四五一 〃 三四五六 〃 三七八九 三の組 三四八一
〃 三四五二 〃 三七八六 〃 七二六八 〃 五〇六七
〃 三四五四 〃 三七八七 〃 七二六九 〃 五〇六八
三の組 五〇六九 六の組 八九五五 六の組 八九五八 合計
四の組 六五八六 〃 八九五六 一〇の組 〇二六一 二四枚
六の組 八九五二 〃 八九五七
別表 (四) 控訴人緒方宏安所持の抽せん券
二の組 一六七六 二の組 一六九一 二の組 〇九五四 三の組 五二六八
〃 一六七七 〃 一六九二 〃 〇九五六 〃 五二六七
〃 一六七八 〃 一六九八 〃 〇九五五 〃 七一三一
〃 一六七九 〃 一六九九 〃 九二六九 〃 五二四八
〃 一六八〇 〃 一七〇〇 〃 九二七三 〃 五二五一
〃 一六八四 〃 三八七六 〃 九二九七 〃 五二四七
〃 一六八五 〃 三八七七 〃 九二九八 〃 五二五〇
〃 一六九〇 〃 六八四六 〃 九三〇〇
〃 一六八六 〃 六八四七 三の組 五五四四 合計
〃 一六八七 〃 六八四八 〃 五五八三 四〇枚
〃 一六八九 〃 六八四九 〃 五二七二